弁護士によるリーガル・リサーチ

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弁護士によるリーガル・リサーチ

リーガル・リサーチとは?

 リーガル・リサーチとは、それぞれの事案の争点を特定し、争点に関する法令や判例、書籍などを用いて調査することをいいます。実際の調査では法令集にあたったり、判例については判例検索システムを利用して、先例となる裁判所の判断を調査したり、書籍の場合にはAIを搭載したサブスク型のライブラリを利用して複数書籍を同時の検索するなどします。

リーガル・リサーチの重要性

 法律は、1つの条文でさまざまな事例を解決できる「幅」が求められます。すべての事例を個別に定めるのは難しく、細かく定めると隙間ができたり、法律や条文の数が増えて複雑になるからです。一方で「幅」があるということは、そこに解釈が求められます。
 弁護士が相談にお答えしたり、代理人として事件を処理するにあたっては、争点に関する法令を調査し、その法令の定める内容について、裁判所が過去にどのような判断をし、その判断の射程が今回の事例に及ぶのかといったことをしっかりと調査するからこそ正確な見通しを立て、具体的なご説明や主張をすることができるのです。
 その意味でリーガル・リサーチの精度が最終的な結論を左右するといっても過言ではなく、法律問題について弁護士に相談したり、委任するメリットであるといえます。

判例・裁判例のリサーチ

判例調査の重要性

 リーガル・リサーチの中でも大きな比重を占めるのが判例、裁判例のリサーチです。判例とは広い意味では裁判所の過去の判断をを指しますが、判例の中でも同種の事件について繰り返し、その判例と同じ判断がなされているような先例となる判例は特に重要です。
 先例となる判例がある場合、以降も同じ判断が繰り返される可能性が高く、見通しを立てるにあたって重要な意味を持つからです。
 また判例は、ある争点についての判断にあたってどのような事情を考慮するかといった重要なポイントを明らかにしており、実際の裁判ではそのポイントになる事情をしっかりと主張立証することで良い結果を引き寄せることになります。

判例を理解することの難しさ

 インターネットを検索すると、多くの判例がヒットし、ご自身の直面している問題にぴったり当てはまると思えるようなものも見つけることができる場合があります。しかし、その判例の結論だけを見て判断することにはリスクがあります。
 例えば、離婚訴訟においては民法所定の離婚原因がなければ裁判所は離婚を認容しません。その離婚原因として民法770条1項は不貞行為や悪意の遺棄、配偶者の生死が3年以上不明、回復の見込みがない強度の精神病などを例示した上で「婚姻を継続し難い重大な事由がある」ことが要件としています。この要件に当てはまる例について、よく「長期間の別居」があげられていますが、長期間とはどの程度の期間を指すのか明確ではありません。ある裁判例は、3年の別居で要件を満たすと判断し、別の裁判例では同じ期間でも要件を満たさないとしている場合もあるのです。なぜ結論が分かれるのかというと、単純に別居期間で決められているのではなく、別居に至る経緯や別居後の状況なども含めて「婚姻関係が破綻している」といえるのかを判断しているからです。このように判例調査にあたっては結論よりも、なぜそのような結論を導いたのかという点が重要になり、そこに難しさがあるといえます。

リサーチ以上に重要な説明力

 弁護士は法律を専門的に学び、資格を得ている専門職業家であり、訓練によって法的思考力(リーガルマインド)を身に着けていますので、リーガル・リサーチの精度も高く、スピードも一般の方よりも早いのが当然であり、そこに職業人としての本質があるといえるでしょう。
 もっとも、高い精度のリサーチを行ったとしても、それを専門的に難しくお伝えしても意味はありません。弁護士だけが理解して「あとは任せなさい」という時代もあったようですが、少なくも現代においては、十分にリサーチし、正しい見通しを立てて、わかり易い言葉で説明する力も同時に求められています。
 私もできる限り、専門用語は使わず、わかりやすい日常の言葉に置き換えたり、理解の助けになるような具体例をお示ししたり、図表を用いるなど日々成長のために努力しております。わかりやすかった、問題が理解できて納得できたというご反応をいただけるように、リサーチだけではなく説明力も高めていきたいと考えております。